看護師の村田です。
読書の秋ですね。
先日数学の本を見ていた時に、解答のプロセスによって答えが異なる問題が載っていました。数学の得意な友人に尋ねると「図を描くと確認できる」とのことでした。しかも彼は「この問題は式で解くより、図を描いてしまうほうが早く正確に答えを導くことができる」というのです。
私は表面的には納得しながらも「いやいや、式を使って途中経過を示さなくては、客観的な論理を示すことができないのではないか」「図を描くだけで『はい答えはこれです』なんて数学とは言えないのではないか」そんなモヤモヤした思いで彼の説明を反芻していました。そもそも「数学」とは何なのか?
今回はそんな時に読み返した本、「数学する身体」(森田真生著/新潮社)を紹介します。
この本の中で森田は「古代ギリシア数学においては、図を描くという行為そのものが証明プロセスの一部だった。私的な思考を公的に表現するために図があるのではなく、思考が初めから図として外に現れていた。」と述べています(第2章-Ⅰ)。まさに友人と同じことを言っているのです。
出版から8年経つ本になります。自然科学の世界は日進月歩で書物も内容がどんどん古くなってしまうことが多いのですが、この本では数学を「人間を出発点として」描いており、何度読んでも瑞々しい印象を与えてくれます。数式は一切ありません。太古の「数を数える」という営みから、現代社会を支えるインフラとしての数学、または哲学としての数学世界まで、人間の視点で描くエッセイとなっています。
自然科学も人間の営みの1分野です。人間は太古から、自然の中に自分を投影させて、自己の存在や生きる意味を測ってきたのです。秋も深まり読書しやすい季節になってきましたね。ハードカバー、文庫とも小田原図書館にありますので、ぜひお試しください。