こんにちは、看護師の村田です。
春になり、小田原の桜もいつのまにか葉桜になってしまいました。
桜は散り際が潔く美しいことから、武士の美徳を象徴する花といわれています。
しかし、江戸時代の日本人の8割以上が農家であることを考えると、武士を象徴する花がそのまま日本人を象徴する花となっていることに、私は子どもの頃から違和感をもっていました(私も先祖は代々農家です)。
もちろん長きに渡って武士階級が日本を支配していたことが大きく影響しているのですが、この日本人の美徳を世界に紹介したのが新渡戸稲造の「BUSHIDO(武士道)(1908年発表)」です。1908年発表ということは、武士階級がいなくなった西南戦争のさらに30年以上後に書かれた本ということになります。
改めて読み返してみると、新渡戸のいう武士とは、いわゆる封建制の中の武士階級そのものとは少し異なるように感じられます。「礼の最高の形態は、ほとんど愛に接近する(矢内原忠雄訳)」と言っています。礼という儒教的な言葉と、愛というキリスト教的な言葉を結び付けているところも、新渡戸らしい表現で面白いなあと感じました。
新渡戸は旧来の武道精神をそのまま礼賛するのではなく、批判的な解釈も加えて、近代的な日本人の考え方に昇華していることがわかります。そうして桜も、洗練された日本人の象徴として受け入れられていったのでしょう。
海外に日本人を紹介することが目的の本ではありますが、日本人も自己を再発見できる作品として、今回紹介させていただきました。